憧れが生んだ別の物
何かに憧れることがある。だけど、憧れてそれに近づこうとしても、その憧れた物その物になれるなんてことはあまり多くない。二番煎じや劣化版なんてことになる事は多々ある。いつも出来上がるのは憧れた物とは違う「何か」。でも、その何かがいつも価値がないものとは限らなかったりもするから面白い。
ソメイヨシノの名前の由来の話。
「ソメイ」というのはソメイヨシノを開発した植木屋があった町、染井町の名前から。
「ヨシノ」というのは開発当時桜の名所だった奈良県山岳部「吉野山」からとられている。
この花が開発された当初、ソメイヨシノはソメイヨシノではなく「吉野桜」という名前で販売された。そして、面白いことに開発した植木屋さんは本物の吉野山の桜群を見たことはなかったのだという。
日本の代表的な風景といっても過言ではないソメイヨシノは見たこともない有名な景色に対する不確かな憧れからきているのだ。
事実、吉野山の桜群はソメイヨシノのように単一の色からなる景色からではなく様々な種類の桜からなるグラデーション豊な景色だ。とはいえ今となってはソメイヨシノの方がきれいな桜として思い浮かべられる景色だ。
その植木屋さんは今の状況を知ったら嬉しいだろうなぁ。今のようにインターネットで世界中の景色を見られるようになった時代では再現性の低い話なんだろう。