人生の先輩
実家のコーヒーメーカーは僕が物ごごろ付いた時にはその勤めを果たしていた。
朝はパン食である両親の強い味方で、たまに寝坊したときなどはインスタントコーヒーになってしまうことはあれど、まめな母はよくコーヒーを淹れている。朝食の時間が合うときは父もそのコーヒーを飲んでいる。
朝食の準備をしながらコーヒーが出来上がるのを待つ母と、母の淹れるコーヒーを新聞を読みながら待つ父。そしてコーヒーの匂い、コポコポという沸騰するお湯の泡の音。
実家の休日の朝のルーティーンは、このコーヒーメーカーによるところが大きい。
とある休日の朝。
その時も母はコーナーを淹れようとした。フィルターをセットし、豆を入れ、コーヒーメーカーに水を入れる。そしてスイッチ。
普段はここでスイッチが点灯しコーヒーメーカーが動き出すのだが、なぜか今日に限ってはスイッチが点灯しない。母が「え~。壊れたぁ?」といいながらスイッチを何度もパチパチと切り替えるのだがコーヒーメーカーはうんともすんとも言わない。
父が「ついに壊れたか。」といいながら新聞から目を外す。
母「ずいぶん長い間お世話になったものねぇ。しょうがないか。」
僕「どのくらい使ってたの?このコーヒーメーカー。」
母「もう5年以上にはなるわよねェ」
続く