私の「面白い」

私の「面白い」

読んでくれたら嬉しい。共感してくれたらもっと嬉しい。でも私のために書きます。

はじめてのおつかい

誰もが一度は通る難関。初めてのお使い。

これを乗り越えた暁にはついに僕も大人の仲間入りと息巻いて、でも無駄に重たいプレッシャーも感じて、近所のスーパーまでの道のりはこんなに長かったのかと思いながら歩いた。
右手に握られるは、ミッションの指令書。買うものが一通りと幾つかの指令が書いてある。漢字の読み方まで書いてある僕のための特注品だ。今日の晩御飯のメニューは僕のミッションの完遂にすべてかかっているのだ。

十数年前のことなので、記憶はかなりおぼろげだが、ミッションは確か以下の通り。
買うものを忘れずに全部買う。
同じものでも量が違うものがあるから間違えない。
つぶれるものは下にしない。
レシートをもらう。
お店の人にはありがとうをちゃんという。
わからなければちゃんと聞く。
すれ違う人には挨拶をする。
不安になっても泣かない。
知らないおじさんについていかない。
試食をたくさん食べようとしない。


永遠にも感じられるような数十分のミッションは滞りなく進み、僕は見事一つのミスもなくお使いをやり遂げた。




ただ、惜しむらくは、お店に買ったものを置いてこないほうが良かった。
これは指令所発行者のミスである。