私の「面白い」

私の「面白い」

読んでくれたら嬉しい。共感してくれたらもっと嬉しい。でも私のために書きます。

父の面影

日常の中で父をふと感じることがある。

特に髭剃りの後。

僕の髭剃りは父のおさがりだ。
父のお古を貰うという形にすると自らの懐を傷めない、そしてよく吟味された良い物が手に入るという二つの利点がある。
父には新品を買う口実できるし、一石三鳥。これぞ、親孝行というもの。(んなわけないか)

我ながら、衛生的なところは比較的あっけらかんとした物で全然気にならない。
ただ、毎度髭を剃り終わった後にほのかに父の匂いがする。
これがホームシックにさせたり、ホームシックを直したりする。というのも、髭剃りを終えるたびに「いい年こいて、ホームシックかい」という父のせせら笑う顔が浮かぶからだ。

この髭剃り、どんなにキレイに洗っても父の匂いが取れない。ホント。父から譲り受けてもう三年以上たつが未だにとれない。他で父の匂いを感じることもないから僕が父の匂いを発するようになったということもないハズ。

 


ここで最近になってようやく気付いたのだが、恐らく僕が幼少のころから長年ずっと父の匂いだと思っていたあの匂いは髭剃りと髭剃り負け防止の消毒液が合わさった匂いだったということではないだろうか。というのも、父にあやかってその髭剃り後の消毒液も全く父と同じものを現在僕が使っているからだ。これなら色々合点がいく。今度、髭剃りを買い替える機会があったら、一緒に消毒液も買い替えてみよう。父の面影は消えるのかもしれない。

 

数十年後、父が(勿論一日でも長生きして欲しいが)他界し、ある時兄と父の幽霊を見た見ないの話をするようなことになったら、きっとこの匂いがするに違いない。

 

続く